※最終更新日 2021年12月17日
今回は「スタートが上手くなれば泳ぎも比例して上手くなる。」ということで、クロールの水中スタートについて解説していきたいと思います。泳ぎのうまい人がなぜスタートが上手いのかというと、水泳はスタートで壁を蹴った直後が最も速い速度となるからで、そのスピードをできるだけ落としたくないと考えているからです。一度止まってしまうと加速するのに何倍ものエネルギーを使ってストロークしなければならなくなるので、それを回避したいわけです。
基本的にスポーツ施設での指導では、水中からのスタート練習をほとんどおこなっていないという所が大半であると思います。それは、泳法指導に力を入れているためで「皆さんのニーズに合わせている」というのが正確なところです。たまにスタート練習をしたとしても、その時にレッスンに出ていない人がいれば、次のレッスンに繋がらなくなってしまうので泳法指導が主になってしまうわけです。
以下は25m泳いだ時に5m、10mで浮き上がることを基本にした距離別の表になりますが、意外に潜っている時間が長いことがわかると思います。
泳ぐ距離 25m |
潜る距離 5m |
潜る距離 10m |
---|---|---|
50m | 10m | 20m |
100m | 20m | 40m |
200m | 40m | 80m |
400m | 80m | 160m |
800m | 160m | 320m |
1000m | 200m | 400m |
1500m | 300m | 600m |
壁を蹴ったスピードと同等で浮き上がってこられれば、泳ぐ距離も少なくなりストローク数も減るのでエネルギーを節約できます。管理人は25m中10mは潜るので、泳ぐ距離の2/5、実に40%も水中にいるわけですが、初心者の方でも壁を蹴ってキックをしなくても5m(20%)はスピードを落とさずに進むことは可能です。
練習中、すべてのスタートで意識するというのは難しいかもしれませんが、短水路(25mプール)であれば100mで4回、1000m泳げば40回壁を蹴る事になるので、そのうちの数回でかまいません。コツコツと練習することで確実に上手くなれる技術ですので、ぜひ意識して行っていただければと思います。
管理人の練習日記(自粛明けに泳いだ際の感想なども掲載)
以下はよくプールで見かけるスタートを再現したアニメーションになります。(「最初に戻る」ボタンを押すとスタート動作が始まります。)
このスタートは、体を少し倒しただけで壁を蹴っています。体が水平になっていないので、壁を強く蹴る事ができず失速してしまっています。また、顔が水に沈めている時間が長くなるのが恐いという意識もあるのかもしれません。
以下のアニメーションBは、まずできるようになるべき水中スタートです。しっかり壁を蹴ってスピードを浮き上がりまで維持する事ができれば「うまいスタートができる人」という事になります。
スタートでスピードを出すとストロークも一生懸命頑張ってしまう人が多いのですがそれは間違いです。肩に力が入ればガチガチになって回らなくなりますので、できるだけリラックスして「そのスピードを最小限の力で維持していく意識」を持つようにしていきましょう。
また、壁を蹴ってすぐに足を動かしてしまうと抵抗になりますので、キックをしてもブレーキがかからない場所までしっかりとストリームラインを維持するように気をつけましょう。
スタートが苦手な方がまずやるべき事は、壁を蹴る位置で体を水平にする事です。実際に壁に体を近づける方法ですが、以下のアニメーションBを見ていただくとわかる通り、まずは一度体を持ち上げて沈み込む必要があります。うまい人をよく見ていると、プールにいる間は直立している人はほとんどおらず、肩まで水に浸かっている人が多いと思います。アニメーションBのようにスタート前に体を少し持ち上げ、15コマ目の頭の位置よりも壁側に下がりながら体を水平にしているのがわかると思います。
水中に沈めない方のほとんどは、アニメーションAのようにすぐに体を倒して水平にしようとしてしまいます。陸上でジャンプする際体を沈めるように、まずは水中に体を沈めてから水平にします。膝を曲げながら体を壁に近づけましょう。1秒でもしっかり膝を曲げて水平に壁に足を付けるできれば、管理人のように垂直跳びが50cm程度しか飛べない人間でも蹴伸びで15m(息が続くかぎりであれば20m)進む事ができるようになります。
皆さんの通っているプールにも上手く泳ぐ方は必ずいると思いますので、その方のスタート動作をよく観察していただければと思います。ただし、トップスイマーが潜ってドルフィンをしているのを真似て、明らかに失速している方を見かけることがあるので、25mをキックだけで15秒以内で泳げない方は、必要以上に潜らずに、まずはアニメーションBのような浮き上がりを目指しましょう。
アニメーションAのようなスタートをする方の多くは、スタートした後に徐々にスピードを上げていくような泳ぎになってしまうので、最初から力を使うストロークをしなければなりません。逆にアニメーションBのようなスタートができるようになると、1ストローク目を力ずくでやってしまえば、自転車で坂道を下りながらスピードが出ている状態で頑張ってペダルを漕ぐような形になってしまうので、空回りをしない程度の力でストロークすればいい事がわかるようになると思います。
また、皆さんはフィン(足ひれ)を付けて練習した事はありますでしょうか。フィンにはいろいろなトレーニング効果を期待できますが、その一つに「前面抵抗を受けない泳ぎの形を作る」という目的もあります。つまり、スタートのスピードを維持しようとするならば、必然的に抵抗を少なくしようとするので、自然に泳ぎ自体も「抵抗の少ないフォーム」(体の形)になっていくわけです。
逆に言えばスタートでスピードを維持して浮き上がる事ができないと、「せっかく抵抗の少ないフォームを作る機会を失っている事になる」ので、スピードを維持する事がとても重要である事がお分かりになると思います。
速く泳ぎたい方は抵抗を減らしてエネルギーの節約もできますし、ゆったり泳ぎたい方も浮き上がりが速くなるので、優雅に泳いでいても速い泳ぎが可能になります。ぜひ皆さんに習得していただきたい技術ですので、毎日の練習で気をつけていただければと思います。
そして、浮き上がりがうまくなったら、以下のおすすめ記事であるバサロキックを組み合わせたスタートにもチャレンジしていただければと思います。
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