※最終更新日 2022年7月27日
バタフライのドリルで多用される片手回しですが、その特徴を詳しく解説させていただきたいと思います。まずは管理人がオススメするゆったり大きな泳ぎでのストローク各部の名称を簡単に解説させていただきたいと思います。
・9〜14コマ アウトスイープ
・15〜20コマ インスイープ
・24コマ フィニッシュ
・25〜29コマ リカバリー
・30コマ 入水
・31〜8コマ グライド
このような形でストロークは進んでいきます。ストロークのスピードは一定ではなく、インスイープに入った所からフィニッシュまで加速していき、その反動を使ってリカバリーします。
以下のアニメーションAはよくありがちな片手回しのフォームです。上級者でもこのような泳ぎになっている方は多いのですが、注意して頂きたいポイントがいくつかあります。
バタフライは本来前から見た肩のラインが水平になる泳ぎですが、片手回しのドリル(アニメーションA)では肩のラインは斜めになり、うねり(上下動)を作りやすい泳ぎになっています。右手をストロークすれば右腰側が高くなり、フィニッシュ時に天井に向けて手を簡単に抜く事ができます。
アニメーションA’は、アニメーションAの肩のラインを水平にしたもので、フィニッシュ直後の17〜19コマ目で腕が水面下にある事がわかると思います。アニメーションではわかりやすいように同じ時間軸で動かしていますが、実際にはここで大きく抵抗を受けて、2ストロークもすれば腕の動きは必ず遅くなってしまいます。
つまり、両手でストロークした時には天井に向けて手を抜くことは難しいので、フィニッシュ時に腰の位置を高くする意識は片手回しでも重要になってきます。
ほとんどの方は「うねりのイメージ=波型」と考えていると思いますが、以下のアニメーション右上の「8」ボタンをクリックすると、うねりのイメージが表示されます。Aがこのままの姿勢で泳いでしまうと16コマ目のように腰が沈み(「16」ボタンをクリック)、頭だけが浮き上がって上半身に水の抵抗を大きく受けてしまいます。(「うねりの誤解」で解説しています。)
ただ、片手回しの場合は体が斜めになっているのでバタフライのスイム程正面からの抵抗を受けない+前に伸びた左手がガイド役をしているので姿勢が悪くても泳げてしまいます。結果このドリルがリズム良くできるようになると、あたかもバタフライが泳げてしまうような錯覚に陥ってしまいます。
更に、「平泳ぎ ストロークの教え方・泳ぎ方」で、体を持ち上げるのはインスイープからおこなうと、体をくの字にしやすく腹筋にも力が入りやすい事を解説しましたが、バタフライも同じで、アニメーションAは5〜16コマ目まで体が上昇し続けています。これは、入水からすぐに体を持ち上げる動作を癖づけてしまっている事になりますし、また、「腰が反っている時間が長い」ので腰痛への注意も必要です。
対してアニメーションB(上級者)は8コマ目まで体が水平を維持しインスイープから体を持ち上げていますし、腰が反っている時間も少なく、16コマ目のフィニッシュの位置では右腰が水面に出る程上がってきています。
もしアニメーションAの泳ぎのままバタフライのスイム(両手回し)で25m泳ぎ続けると、腕を持ち上げる事が出来ずにどんどんスピードも落ちてタイミングが合わなくなってしまいます。Swimming.jpでは「バタフライを楽に泳ぐ「4ステップ」の泳ぎ方」にて以下のような習得手順を解説していますが、ストローク練習を全て両手でおこなう理由はここにあります。
1. イルカ飛び
2. イルカ飛びから1ストローク
3. イルカ飛びから1ストローク+潜る
4. イルカ飛びから2ストローク(できるようになったら1ストロークずつ増やしていく)
25mをフォームが崩れても泳ぎ続けてしまう練習より、1ストローク1ストロークを大切にして、それができるようになったらストローク数を増やしていく方が、いいフォームを持続できますし、疲労が少なく何度も練習する事が可能になります。
かといって、片手回しが必要ないわけではありません。それが最も必要になるのは、上記の4ステップをクリアした後25m以上泳げるようになった時です。この4ステップの泳ぎは、どうしてもうねりが大きくなってしまい、競泳ルールである「体の一部が水面上に出ていなければならない」という規則に抵触します。
このルールがあることによって疲労度が高い泳ぎをしなければならない現状が作られてしまっているのですが、大会に出ず健康目的で行う為であればこのルールを守る必要はないので、楽にゆったり泳いでいただいた方がエアロビックで健康的な泳ぎであるため皆さんにオススメしています。実際にはマスターズ大会で速いテンポでも沈んでいる方がいらっしゃるので、失格に取られる事はほぼないと思います。
中には「やるからには競泳選手のようなバタフライを目指して練習したい」と思われる方もいらっしゃると思います。そのような方は、この片手回しを行うことでバタフライのリズムを作りやすいという利点があります。
うねりを作り出す(うねりで推進力を得られる)ポイントはアニメーションBの入水直後21〜6コマ目で、スピードアップを目指して泳ぐのであればこの部分以外はできるだけフラットに泳ぐことが重要です。片手回しでも同様でAのような泳ぎをする上級者も多いですが既にリズムができているのに深く潜ってしまうのは練習としての意味をなしていません。
できるだけ腰を高い位置を維持するように意識し、体を持ち上げる高さを抑える事でスイムで抵抗を減らすためのドリルとなるようにしていきましょう。
ただ、このアニメーションBの泳ぎを初級者のうちから行ってしまうと「うねりのない泳ぎ」正確に言うと「うねりを作り出せない泳ぎ」(こちらで解説しています)になってしまうので、「バタフライを楽に泳ぐ「4ステップ」の泳ぎ方」をクリアした後、おこなっていただければと思います。
以下の画像Aのように肩の固い方は「うねりの大きいバタフライを推奨する理由(前編)」で解説したように、「うねりの大きい泳ぎ」を繰り返して腰に負担を掛けないバタフライを身につけていただきながら肩を徐々に柔らかくして、画像Bに近づいてきてからリズムを作る片手回しドリルを行う事が有効です。
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