※最終更新日 2019年10月7日
Swimming.jpでは、ローリングを大きくする事を推奨していますが、近年、トップスイマーの技術である「2軸」などフラットの泳ぎを推奨する書籍や記事が見受けられます。
それでもあえて「1軸のローリング」をなぜ推すのかを「抵抗」「力の使われ方」の2つのポイントに分け細かく解説させていただきたいと思います。
まずは2軸という技術がどういうものなのかですが、以下のアニメーションを見てください。Aのアニメーションが2軸で遊具のシーソーのように軸が肩の左右に移動します。その左右に軸が移動する間に背中が浮いているので前面抵抗が少なくなるという技術になります。Bは1軸のローリングです。
まず、以下のアニメーションを見ていただきたいのですが、肩の動きを簡潔に表したものです。A,A’はいわゆる2軸クロール、B,B’は1軸のクロール、A,Bはトップスイマー、A’,B’は一般の方を表しています。
Aの2軸クロールを見ていただきたいのですが、Aはとても体が浮いているのがわかると思います。なぜこのような泳ぎができるか、それは「スピード」です。これはトップスイマーだからこそ得られるもので、泳速が速いとモーターボートのように体が自然に浮くので浮かす力はあまり必要なく、抵抗が少なくなります。(「情報過多による弊害」でも解説しましたが、ただ肩(上半身)だけが上がっているだけではいけません。体全体が持ち上がっていなければ、足が沈み抵抗になります。)
逆にA’の方はスピードが遅いので沈んでしまう訳ですが、このまま進んでいくと、抵抗が大きいので余計にスピードが落ちていき、更に体も沈んで行きます。そして肩に掛かる水を押しながら泳がなければならないので余計に力を使い体力を消耗してしまいます。また、体が沈んでいて無理に腕をあげれば、肩を痛める可能性も出てきます。(クロールに重要なローリング参照)
ここで、上記アニメーションの1コマ目の水中に沈んでいる量を比べてみましょう。
抵抗を一番受けているのは、A’の方という事になります。せっかくトップスイマーの技術を利用しようとしたにも関わらず、体が沈んだままフラットな泳ぎになり、もっとも効率の悪い泳ぎをする事になってしまっているのです。
実はトップスイマーはA,Bを使い分けています。ゆっくり泳ぐ時にはBのような泳ぎをしています。遅くなれば当然トップスイマーと言えどもA’のようになってしまうので、自然にBの泳ぎに移行しているのですが、それが全くと言っていい程記事にならないのが不思議です。トップスイマー自身に意識がなく移行している、又は分かっていて雑誌のインタビューなどでも話しているけどこの部分を切られてしまっているので、技術だけが一人歩きするような状態となってしまっているように感じます。
以下のYoutube動画はロンドンオリンピック金メダリストの泳ぎですが、90度近くまでローリングしているのがわかると思います。世界チャンピオンでもゆっくり泳ぐ時には、Bのような泳ぎをしているわけで、スピードが上がって始めて「2軸をやってみてもいいかな。」と意識するようになれば理想的ではないかと管理人は考えています。
では、どのくらいのスピードがあればいいかですが、タイム的には一つの目安だと考えていただきたいのですが、100mで1分を切るラインでしょうか。
言葉で表現するのは難しいのですが、速く泳いだ時にいつもよりボディーポジションが高いイメージがあり、肩が完全に出ていて水が当たらない時間が長く、水上を飛んでいるような感覚を持ったことがあるかどうかです。
ただ肩に水が当たらないだけでは上下動をしている可能性もあるので、そのボディーポジションを上下動せずにスピードだけで維持できているかが一番大切な部分になります。それを感じたことがないうちから2軸という技術を取り入れても逆効果になりますし、実際に水泳を行なう人の90%以上の方は2軸を行なうと抵抗を大きくしてしまうと考えられます。
この2軸クロールですが、体全体が浮き上がるほどのスピードがなければ沈んでしまうので、トップスイマーでも長くは持たない短距離向きの泳ぎで、これが2軸が一般の方に向かない理由の一つです。
そもそも日本人ならまずは絶対にローリングした方がいい理由があります。それは「胸板が薄く肩甲骨の動きが悪い」からです。欧米人は胸板が厚く、肩甲骨が生まれながらに自由に動かしやすい体型をしています。
大きなストロークをするためには肩甲骨を大きく動かせないといけない訳で、もし無理にそれを補うとすれば、パワーで前に出すしかないということになります。ただでさえ欧米人よりもパワーに劣る日本人がパワーで勝てるようには思いません。日本人は技術が高いといいますが、生まれつきの体の構造でも損をしているとなると、相当な努力が必要になってくると思います。
ただ、逆にこれで肩甲骨を大きく動かせるようになれば、肩こりなどにも悩まされなくなるかもしれません。実際に管理人も1日中パソコンに向かっている事が多いにも関わらず水泳のおかげで肩凝りに悩まされた事はありません。