※最終更新日 2022年7月27日
バタフライは上下動を伴う泳ぎですが、体が前に進む理想のうねりというのはどういううねりなんでしょうか。今回はバタフライのうねりに焦点を絞って、その原理を3D映像交えて以下の3点を解説させていただきたいと思います。
1. 体重移動のポイントは腰の位置
2. うねり+スピードで進む
3. 中級者から上級者になるためには短い距離を何度も練習する
各項目の「陥りやすい問題点と改善方法」についても解説していますので、最後までご覧いただければと思います。
バタフライはストロークの他に「進むポイントはストロークと○○○○」で解説したように、体重移動によって進みます。
体重移動で進む原理は以下のアニメーションのように、アクアスキッパーの足元のプラットホーム最下部がバタフライの水中に進んで行く形と一致しているため進みます。
この時の上半身を見てください。体が沈み込む際の腰の位置が頭の位置よりも高いことがわかると思います。このように上半身が斜めに沈んで行かなければしっかりとした体重移動ができません。
以下のアニメーションを見てください。これは、水中が見えない状態での上から見たバタフライをアニメーションで表したものです。上級者Bはフィニッシュの21コマ目付近で水面上にお尻まで持ち上がっている事がわかると思います。
対して中級者Aの場合は腰の位置が上がらず、頭の位置が並行もしくは腰より高い状態が続きます。これでは、体重移動での推進力を得ることはできません。腰が沈む事でフィニッシュの手を水面上に抜くまでの距離が長くなり水の抵抗を受けながら腕を持ち上げるので時間も余計にかかってしまい、リカバリーの速度も落ちてしまいます。
フィニッシュの勢いを使ってリカバリーしたいのにそれもできず、この間、ずっと顔を上げ続けていなければならなので、23コマ目〜27コマ目のようにさらに腰が沈んでしまうわけです。
腰が沈む理由はアニメーションの呼吸をくらべて頂くとわかりやすいと思います。
・ストロークを始めてすぐに体を起こしてしまい腰が沈む。(1〜20コマ目)
・腰が沈むのでフィニッシュの手を水面上に抜くまでの距離が長くなる。(20〜24コマ目)
・水面に抜くまでに水の抵抗を受け、フィニッシュの勢いを使ってリカバリーできない。(20〜35コマ目)
リカバリーが遅くなるという事は自分の力を使って前に戻さなければならなくなるので、余計に疲れてしまいます。水の上を引きずっていれば更にエネルギーが奪われてしまいます。
以下の画像を見てください。Aは初級者の泳ぎ、Bは上級者の泳ぎの力の向き(ベクトル)を表しています。
例えば、Aは25mを30秒、Bは25mを15秒で泳ぐとします。黄色い矢印がスピードですが、このスピードが速ければ速いほど、深く潜らなくてもベクトル(赤色)が長くなりますし、力の向きも前へと向かいます。
トップスイマーはスピードによって浅く沈む体重移動でも強い力で水を水中に押し込む事ができ、これに加えてストロークのうまさやキックの強さ、タイミングが完璧に合っているので、非常に大きな推進力を得ることができるわけです。体重移動については先程も紹介しました「進むポイントはストロークと○○○○」にて詳細解説しています。
以下の映像は、娘がバタフライを25mを泳げるようになる3ヶ月前のものですが、一般の方でもこのような泳ぎになっている方をこれまで多く見て来ました。
一見、お尻が浮いているのでしっかりとしたうねりができているように見えますが、スピードがない事で画像Aのように水中に向かってベクトルが向いてしまい、うねりが抵抗を生んでしまっています。
改善するためにはスピードが必要で、「1000mを泳いでも息が切れない泳ぎの極意」の4ステップのイルカ飛びが重要になってきます。
イルカ飛びはうまくできるようになると、1回で10m以上進める(=水中スピードが速い)ようになりますので、スピードに乗ったバタフライの練習ができるようになります。
最後のステップである「イルカ飛びからストロークをつなぐ」で、もしストロークを1回、2回、3回と重ねて行った時にスピードが落ちるようであれば、そこで一旦立ち止まり、イルカ飛びで再度スピードを上げてストロークを行います。
練習を重ねて行くことで徐々にスピードを持続できる時間も長くなっていきますが、1ストローク目に腰を高い位置に持ち上げる事ができれば、このスピードに乗って腰の位置を毎回高い位置に持ち上げられるようになって行きます。
バタフライは効率良く泳ぐ事ができないと疲労度の高い泳ぎですから、一旦立ち止まる事で疲労の蓄積も和らげられるので、練習を効率良くおこなう上でも非常に理にかなった練習方法であると感じています。
先程も解説しましたが、バタフライは疲労度が高い泳ぎです。疲労度が高い泳ぎを25mずつ練習すると、どうしても最後にはリカバリーの手が持ち上がらなくなります。管理人の中では「リカバリーが持ち上がらない状態で泳ぎ続ける程泳ぎやタイミングが崩れる」と感じているので、短い距離を何度も繰り返し練習する方が効果的です。
もし、スピードが遅い状態のままバタフライを25m泳ぎ続けられるという方は、もう上級者まであと少しの所まで来ています。特に女性の方に多いのですが、以下のアニメーションのように入水前に腕が大きく上がってしまっている方をよく見かけます。
このような方はまさしく「スピードが足りていない」ので、このイルカ飛びのスピードを利用した短い距離を繰り返し、ストロークが等速運動にならないように、フィニッシュに向けて加速するように気をつけて頂きたいと思います。
また、スピードが出ると急激に速度が落ちる事に気付きやすく、自然に「スピードが落ちないように泳ごう」と水の抵抗に敏感になります。イルカ飛びで床を蹴った直後に最も高い速度で流れる水の感覚を覚え、その感覚が持続するように意識する事で、水の中をスムーズに進んで行く事ができるようになります。
リラックスしてスピードを上げる事ができるようになると、水が体を流れる感覚が大きくなるので、マッサージ効果も高くなると管理人は感じています。皆さんにもぜひこの感覚を味わって頂きたいと思います。