※最終更新日 2021年5月25日
前回「楽に泳ぐための息継ぎの形」では肩を大きく回して天井を向くような形になっても「しっかりと大きな息継ぎをすることが大切」であると解説しました。
今回は、初級者から上級者の皆さんにも気をつけて頂きたい所である、「呼吸の量」について1度の呼吸でどのくらい息を吸えばいいのかを解説して行きたいと思います。ゆったり長く泳ぎたい方から、速く泳ぎたい方まで確実に将来的に役に立つ内容ですので、ぜひ参考にしてください。
本題に入る前に次の点について考えてみていただければと思います。
皆さんはプールで泳がれるようになってから、呼吸についてどのくらい注意しましたでしょうか。
大人になると、色々な情報を得ることができやすくなり、ドリルやハイエルボーなどの泳ぎの形で「こうすればいいのでは?」と思えるバラエティに富んだ練習方法がネットで検索するとすぐに見つかります。
確かに色々な練習方法を試す事で、上達する事もあると思いますのでそれ自体を否定するわけではありませんが、短いスパンで1つのドリル練習を試し、また違うドリル練習へと変更を繰り返してしまうと、その瞬間は効果があったとしても、それがご自身の体に定着せず、数年経っても元の泳ぎのままとなってしまっている事の方が多いなと感じています。
中でも呼吸については「気をつけよう」と思っていたとしても、どうしてもストロークやキック、タイミングなどの技術に目が向いてしまい、おざなりになってしまいがちです。
子供は体の柔らかさなど肉体的な利点ももちろんありますが、技術や情報を知らず、注意された部分を集中して続ける事ができるので、泳ぎが定着しやすく、それが上達の早さにも繋がっているのかなと感じます。
少し横道に逸れますが、管理人の中で泳法指導する際、なるべくシンプルな形で教えたいと思っていまして「これとこれをやれば上達する」と言うものがあり、必要以上に気をつける部分を増やさない事も重要だと考えています。
例えば1つのドリル練習を綺麗に何度も同じように根気よく泳ぐ方が技術の定着が早く、気をつけたい部分を集中して練習できますし、以前の泳ぎとの比較もしやすいので「いつもとここが違う」とすぐに気づく事ができるのもメリットになるからです。
結局ここで管理人は何が言いたいのかと言うと「呼吸を意識し続けて欲しい。」と言う事です。選手経験者はそれが当たり前のようにできてしまうのですが、大人になってから泳ぎ始めた方は、水の中に肺が浸かって水圧がかかっている状態で呼吸すること自体が難しいので、大きく呼吸する事をご自分の技術としてより早く定着させて頂きたいわけです。
では、実際には1度の息継ぎでどれくらいの呼吸の量が必要で、何に気をつければ泳ぎの呼吸として理想的なのかを解説していきたいと思います。
以前から管理人は「肺をパンパンにするほど息を吸って泳いでいる」と解説の中でお話ししていますが、それをいきなり泳ぎの中でやろうとしても正直難しいと思っています。ですので、まずはスタート時にしっかりと息を吸うところから始めましょう。
以下は安静時の呼吸と水泳時の呼吸を比較したアニメーションになります。
通常、安静時の呼吸では息を吸う時にお腹が出るのですが、水泳では大きく息を吸うことで呼吸補助筋などを働かせて肋骨を挙上し、肺を膨らませる事でお腹がへこみ、腹筋(みぞおち付近)に自然に力が入るようにします。
肺は息を吐くと自然に縮み、吸う時は筋力が必要になるのですが、水の中で呼吸の度に筋力を使うと陸上とは違い水圧も加わるのでそれだけで疲れてしまいます。一度お風呂に浸かって試してみていただくと分かると思いますが、運動中の呼吸のようにある程度大きく吸って吐いてを繰り返すとあっという間に苦しくなります。
よって水泳上級者は、肋骨を挙上し続ける事で肺がしぼんでしまう事を防ぎ、「胸を張ったままの状態で呼吸」をします。
管理人の感覚では、胸をパンパンにするほど肺を膨らませているので、勝手に息が吐かれてしまいますが、1回ずつ胸が張った状態で吐き切ります。
表現が難しいのですが、胸が張った状態で息を吐き切った後にリラックスするとまだ肺に残っていた息を吐き出すことができます。これが結構な量でして、つまり、胸を張って吐き切った時点では、まだ空気が半分程肺に残っている状態のまま泳いでいると言うことになり、これが浮力としての機能を果たしているのでは?と考えています。
この呼吸は肺を大きく膨らましたままの状態で泳ぐので、慣れるまで時間がかかりますが、しっかりと酸素を取り込む事に集中しながら自然に腹筋を使えるようになるので腰痛予防や綺麗なストリームラインを作る面でも効果的です。
まずはスタート時にしっかり息を吸って壁を蹴りましょう。これを気をつけられるようになれば「水泳 クロール スタートが上手ければ泳ぎも上手くなる!」で解説させていただいたように壁を蹴って5m以上先に勢いを落とさずに浮き上がって来られるはずです。
もし2020年6月にアップした上記記事を見られた方でまだ5m以上先で浮き上がれない方は、フォーム改善の成果も上がっていない可能性が出てきます。なぜなら1000m泳げば40回スタート・ターンするので、もし週1回練習したとして40週経っているとすると1600回以上はスタート・ターンをしている事になり、壁を蹴る動作も上手くなっていなければならないはずだからです。
ただ、改善が見られなくても安心してください。これから3ヶ月程度気をつけ続ける事ができれば、確実に上達するはずです。そこで上達が見られれば、他のドリル練習でも効果が上がるルーティン(練習習慣)をご自身で作り上げることができます。
アラフィフである管理人も自己課題を必ず持ち、注意しながら練習しています。それによって2000mバタフライを泳げるようになりましたので、皆さんも、ご自身のルーティンを作って、上達の速度を上げていきましょう!