※最終更新日 2021年5月9日
クロールを長く泳いだり、速く泳げるようになるためには、息継ぎがしっかりできていなければ泳ぎがいくら綺麗でも酸素が取り込めずにすぐに疲れてしまいます。にもかかわらず、一般的に目に見えている形(ストロークの理想)をすぐに追い求めてしまいがちです。そこで、25m程度泳げる方向けに呼吸について次の3点を深堀して行きたいと思います。
1. 息継ぎの形
2. 息継ぎの呼吸量
3. 息継ぎのタイミング
今回は「呼吸の形」についてです。
呼吸の形と聞いて皆さんは競泳選手のような水面ギリギリのかっこいい呼吸をイメージしませんでしょうか。最終的にこの形を目指していくのはいいと思うのですが、最初からこれをやろうとすると泳速が違うので、以下のようにボディーポジションの差が出てきます。ですので、競泳選手と同じ動作をしたとしても、体が浮いておらず水面まで口が上がってきません。
初級者が競泳選手のような横向きの呼吸をしようとすると、以下のアニメーションのように体を持ち上げて呼吸しなければならなくなるので、入水した右手で水を押して体を浮かせる形になってしまいます。この差は鼻の幅程のたった数cmなんですが、呼吸ができない恐怖心を持ってしまえば、どうしても体を浮かせてしまうのは仕方のない事です。
では、初級者の頃は体に一本の軸を通すような呼吸は難しいのかというとそうではありません。結論から言うと、選手よりも体を開いて呼吸します。
以下は娘がクロールを泳げるようになったばかりの頃の映像と現在の映像を比較したものです。
「クロール 息継ぎ練習用ドリル」でも解説しているのですが、娘がクロール25mを泳げるようになったのが2019年1月で、この動画Aを撮ったのが2019年4月になるのですが、この3ヶ月間はとにかく大きく呼吸をすることを考えるようにアドバイスしておりました。この時は25mを47秒程度かかっていたのですが、動画Bの2019年8月には35秒、2020年1月には23秒で泳げるようになり、実に9ヶ月で24秒を短縮、2021年5月現在は16秒で泳げるようになっています。
ここで私が言いたいのは、タイムが速くなったことではなく、呼吸の位置が段々横を向くようになってきているということです。2019年1月〜4月までの3ヶ月、とにかく呼吸をしっかりするように教えたことで、楽に呼吸をすることを覚えたのだと思います。楽に呼吸ができると、泳げるのが楽しくなるので自分で勝手にどんどん泳ぎ、それによって泳力も上がっていきます。
2019年4月以降、スイミングスクールではクロールをヘルパー付きで呼吸練習をしていましたので、少しずつ横を向くようにアドバイスしていきました。と言っても、スイミングには放課後学童からスクールバスに乗って行っていましたので、私がアドバイスするのはもっぱら月4回程度一緒に行く市民プールでの練習でのみです。ちなみにその時のクロールの練習時間は10分程度だと思います。たった月4回10分程度のアドバイスを3カ月間程繰り返すことで、その後の呼吸が綺麗で楽になります。娘の上達経緯については「1年で4泳法を綺麗に泳がせる方法」で解説しています。
ですので、初級者の頃は無理に横向きの呼吸を練習するのではなく、しっかりと大きな呼吸をする事をおすすめします。初めのうちは体がひっくり返りそうになりますが、ひっくり返っても構いません。以下のアニメは「クロール 息継ぎ練習用ドリル」で解説したものですが、「呼吸動作の大きい片手回し」を行うように泳げばいいわけです。
ここまで大きく体を開く(ローリングする)必要はありませんが、楽に呼吸をできる体勢を作る事ができれば、練習次第でいつまでも泳ぎ続ける事ができます。また、呼吸を大きくする事で勝手に体が大きく開くようになるので、肩を大きく回す事にも繋がります。
最近、娘が選手コースに入ったのですが、誘われるきっかけとなったのは、この「肩が大きく素直に回る事」であったとコーチから聞いています。娘より速い子は何人もいましたが、指導者が好む泳ぎは前後に大きく手が伸びる泳ぎであると感じています。掻くだけでなく、腕を伸ばす事も重要です。
大人の場合でも、肩を大きく回した方が肩周りの筋肉がほぐれますし、肩こりの予防にも繋がります。ただ、いきなり無理に大きく回してしまうと痛めてしまう場合もあるので「まずは10m程度から」と短めに距離を決めて、リラックスしながら腕を大きく回す練習から初めてみていただければと思います。
呼吸を楽にできる大きなストロークは綺麗な泳ぎにつながる布石であると言う事です。